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タカーシャン・ソレイユ
タカーシャン・ソレイユ
novelistID. 70952
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誰もいない場所の、美しさ

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誰もいない場所の、美しさ

先程、ひとつの光景を見た。

誰もいない場所で、
ひとりの人がコートを回して着ていた。

くるり。

無駄のない軌道。
空気を切る布の線。
肩に落ちる瞬間の静かな決着。

見事なほど、綺麗だった。

観客はいない。
評価も拍手もない。
SNSもカメラもない。

それでも、その人は
完璧に、美しく、回して着た。



人は、本当に染み込んだものしか
無人の場所では出ない。

誰かの目があるから整えるのは、技術。
誰もいなくても整っているのは、在り方。

それはもう演出ではない。
習慣になった美意識だ。



さりげない、というのは
力を抜いた完成形だと思う。

力んでいない。
誇示していない。
急いでもいない。

ただ、自然に美しい。

その一瞬に、
その人の生き方が出る。



昭和は「見られて鍛える」時代だった。
令和は「見られなくても整う」時代かもしれない。

評価経済の中で、
無観客の所作を持てる人は強い。

静かな自律。
静かな誇り。



私は、その光景に少し救われた。

まだいる。
誰も見ていなくても
美しく在ろうとする人が。

くるりと回るコートは、
小さな哲学だった。

そして思う。

人生もまた、
誰も見ていない瞬間の連続だ。

そのとき、どう振る舞うか。

そこに、その人の本質がある。