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タカーシャン・ソレイユ
タカーシャン・ソレイユ
novelistID. 70952
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「チッ」という前進音

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「チッ」という前進音

舌打ちは日本人だけのものではない。
英語圏では「tsk」や「tut」と表現され、
失望や注意のニュアンスを持つ。
たとえばアメリカやイギリスでは、
軽いたしなめの音として日常にある。

一方、South Africa の一部言語では、
クリック音はれっきとした“言語”そのものだ。

つまり「チッ」は、
文化を越えて存在する音。

だが私にとっての舌打ちは、
文化論ではない。
もっと個人的で、もっと生々しい。

それは無意識に出る。
思考より速い。
言葉になる前に、体が先に反応する。

イラつきか。
焦りか。
自己嫌悪か。

いや、違う。

それは感情のストッパーだった。

怒鳴らないための。
壊さないための。
ぶつけないための。

爆発の代わりに出る、
極小の放電。

だが、話はそこで終わらなかった。

それは止める音ではなく、
むしろ――

前のめりの支えだったのだ。

前へ出過ぎる心を
一瞬だけ地面に固定する杭。

倒れないためのスパイク。

「チッ」は後退音ではない。
それは再起動音だ。

まだ終わっていない。
ここでは止まらない。
もう一歩いく。

その摩擦が音になる。

舌打ちは
怒りの証拠ではなく、
あきらめない証拠かもしれない。

もちろん、
他人に向けば刃になる。

だが、自分に向くなら
それは意思の火花だ。

私は思う。

人は前進するとき、
必ずどこかで軋む。

無音の前進などない。

「チッ」という小さな音は、
魂のギアが噛み合う瞬間の摩擦音。

それは弱さではない。

前進の意思である。