カムリのような人
世の中には、声を張り上げなくても周囲を静かに支えている人がいる。目立たず、功績を語らず、しかし欠席することもない。カムリのような人、である。
彼らは流行を追わない。新しい肩書きにも、派手な成果にも、さほど関心を示さない。ただ、今日やるべきことを今日きちんとやる。その積み重ねが十年、二十年と続くうちに、周囲は気づく。「あの人がいると、現場が安定する」と。
若い頃は評価されにくい。刺激が少なく、物語になりにくいからだ。だが修羅場を迎えたとき、真価が現れる。トラブルが起きても声を荒らげず、最短距離で現実的な解を出す。壊れない、というのは能力ではなく、人格の耐久性なのだ。
世界が速さと派手さを競うほど、こうした人の価値は増していく。国や文化が違っても信用されるのは、奇抜さではなく一貫性だからだ。カムリのような人は、誰かの成功談の主役にはならない。だが、その成功談が成立する地面を、黙って固めている。
人生の後半で、人は派手さより信頼を選ぶ。最後に選ばれるのは、声の大きい人ではない。今日も変わらずそこにいて、明日も同じ速度で歩ける人。カムリのような人がいる社会は、実はとても強い。



