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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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すねに残る心の傷

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すねに残る心の傷

手の甲の傷は、気がつくと消えている。
血がにじみ、少し痛んでも、いつの間にか皮膚は元に戻る。
ところが同じような傷でも、足のすねについたものは違う。
治ったはずなのに、跡だけが残る。なぜだろう。

理由は単純で、治る力の差ではない。
治りやすい環境かどうかの違いだ。

手の甲は血流がよく、よく目に入り、自然と気にかける。
一方、すねは心臓から遠く、皮膚は張り、歩くたびに引っ張られる。
しかも衣服や布団に毎日こすられ、刺激が途切れない。
傷は治ろうとするが、環境がそれを許さない。

この違いは、そのまま心にも当てはまる。

すぐに癒える心の傷がある。
誰かに話せたこと、共感されたこと、
「それはつらかったね」と言ってもらえた記憶。
言葉が血流となり、感情が循環し、
傷は跡を残さず消えていく。

だが、すねのような心の傷もある。
言葉にできなかったこと。
弱音を吐く資格がないと思い込んだこと。
立場や責任の中で、黙って飲み込んだ感情。

それらは毎日の生活の中で、
歩くたびに、働くたびに、
何度も引っ張られる。
「もう終わったはずのこと」が、
終わりきらないまま残る。

さらに、心にも紫外線がある。
評価、視線、世間、比較。
炎症を起こした心にそれが当たると、
色は沈着し、消えにくくなる。
恥や後悔、怒りや諦めは、
時間が経っても光の下で浮かび上がる。

それでも、すねの傷が永遠に残るわけではない。
乾かさず、守り、触らない時間を与えれば、
跡は少しずつ薄くなる。

心も同じだ。
放置しないこと。
責めずに触れること。
安心できる場所で、言葉にすること。

治る力は、誰の中にも最初からある。
ただ、それが働ける環境に
置かれていなかっただけなのだ。

手の甲のように癒えなかったからといって、
その傷が弱さの証になるわけではない。
むしろそれは、
ずっと耐えながら生きてきた証拠だ。

すねに残る傷は、
生き抜いた時間の痕跡である。
そして気づいた瞬間から、
心にも、ようやく血が巡り始める。

傷は、治る。
ただし――
治るには、環境がいる。
作品名:すねに残る心の傷 作家名:タカーシャン