小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

700億円の招待状と、私たちの「見えない会費」

INDEX|1ページ/1ページ|

 
700億円の招待状と、私たちの「見えない会費」

テレビのニュースが、次の衆議院選挙に「約700億円」の公費が投じられると報じている。国家予算という巨大なスケールで語られると、どこか自分たちの生活とは切り離された、遠い場所での出来事のように感じてしまう。しかし、この「700億円」という数字は、いわば国が国民に差し出した「最高額の招待状」のようなものだ。

そして私たちは、その招待に応じるために、自分たちの財布から「見えない会費」を払っている。

一人の有権者が投票所へ向かう道中を想像してみよう。近所の小学校まで歩くための靴を履き、あるいは数キロ先の期日前投票所まで車を走らせる。そこには数百円のガソリン代やバス代という、目に見える出費があるかもしれない。しかし、より本質的なコストは「時間」という資産だ。

往復の移動と、受付で名前を書き、投票用紙に名前を記すまでの30分から1時間。これを現在の日本の最低賃金に換算すれば、私たちは一票のために約1,000円相当の「自分の時間」を投資していることになる。日本の有権者が1億人いるとすれば、国民全体で費やすエネルギーは、さらに500億円規模にまで膨れ上がる。

つまり、衆議院選挙とは、国が用意した700億円と、国民が差し出す500億円相当の時間が混ざり合う、総額1,200億円の巨大な「国家プロジェクト」なのだ。

これほどのコストをかけてまで、私たちはなぜ投票所へ向かうのだろうか。
一部の研究によれば、若者の投票率がわずか1%下がるだけで、その世代は年間で5万円以上の経済的利益を失う可能性があるという。私たちが投じる一票は、単なる意思表示ではない。それは、自分たちが納めた税金の使い道という「巨大な配当金」の行き先を決める、きわめて現実的な経済行為でもあるのだ。

「たかが一票のために、わざわざ貴重な休日を削るなんて」
そう思う瞬間があるかもしれない。しかし、私たちはすでに700億円という莫大な「前払い」を済ませている。そして、投票に行かないということは、その高い参加費を払いながら、自分に配られるはずのチケットを捨てているのと同じことなのだ。

投票所の白い箱に用紙を滑り込ませるあの瞬間、私たちは自分の1,000円分の時間を、未来をより良くするための「投資」に変えている。700億円という数字の裏側にある、一人ひとりのささやかで、しかし確かな負担。その重みを知ることで、鉛筆を持つ指先に、いつもより少しだけ力がこもるような気がするのである。