小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ウイルスという、もう一人の創造主

INDEX|1ページ/1ページ|

 
ウイルスという、もう一人の創造主

私たちは長いあいだ、
ウイルスを「敵」と呼んできた。
病気をもたらし、命を脅かす、排除すべき存在として。

けれど、最新の生命研究が示しているのは、
あまりにも皮肉で、あまりにも深い真実だ。

ウイルスがいなければ、
私たちは今の姿で存在していなかったかもしれない。

生命の歴史を丁寧に辿ると、
ウイルスは破壊者である以前に、
設計者であり、編集者であり、共犯者だった可能性が浮かび上がってくる。



核は、かつてウイルスだったかもしれない

私たちの細胞の中心には「核」がある。
DNAを守り、生命の設計図を格納する、いわば司令塔だ。

その核が、
太古の巨大ウイルスだったのではないか
という仮説が、今や真剣に議論されている。

ウイルスは自らの遺伝情報を膜で包み、
外界から守る構造を持つ。
それは驚くほど、核に似ている。

パンドラウイルスなどの巨大ウイルスは、
もはや「単純な病原体」ではない。
細菌並み、あるいはそれ以上に複雑な遺伝子を抱え、
生命と非生命の境界線を曖昧にする存在だ。

もし、
細胞に感染したウイルスが、
追い出されることなく居座り、
共生を選んだのだとしたら。

真核生物とは、
ウイルスを内包することで誕生した生命形態
だったのかもしれない。



母と子をつなぐものは、ウイルスの贈り物だった

哺乳類が哺乳類である理由。
それは、胎盤を持つことだ。

母親の体内で、
他者である胎児を拒絶せず、
守り、育てるという奇跡。

その中核を担う「シンシチン」というタンパク質は、
実はレトロウイルス由来の遺伝子である。

かつて感染したウイルスの遺伝子が、
偶然にも生命に組み込まれ、
やがて不可欠な機能として定着した。

もしその感染がなければ、
私たちは今も卵を産んでいたかもしれない。

愛情や母性の根幹に、
ウイルスの痕跡が刻まれている。

そう考えると、
敵と味方という単純な二分法は、
もはや通用しない。



進化は、静かな積み重ねではなかった

進化はゆっくり進む。
そう信じられてきた。

だがウイルスは、
その常識を裏切る。

ウイルスは遺伝子を切り取り、
種を超えて運び、
別の生命へと書き込む。

これが「水平伝播」だ。

何万年もかかるはずの変化を、
一瞬で起こすショートカット。
進化のアクセル。

生命は、
自分ひとりで変わったのではない。
ウイルスという編集者に、
何度も書き換えられてきた。



では、どちらが先だったのか

細胞が先か。
ウイルスが先か。

この問いに、まだ答えはない。

生命のスープの中で
自己複製する存在が先にあったという説。

高度な細胞が、
寄生に特化してウイルスになったという説。

細胞の遺伝子が飛び出し、
勝手に増え始めたという説。

いずれにせよ、
ウイルスは生命の外側にいる「異物」ではない。

生命そのものの成立に、
深く関与してきた存在だ。



敵であり、更新者であるもの

ウイルスは今も、
私たちを苦しめる。

だが同時に、
生命に新しい可能性を書き込んできた。

破壊と創造。
拒絶と共生。
死と進化。

ウイルスとは、
生命にとっての
外部ハードディスクであり、
アップデート・パッチなのかもしれない。

地球の生命史とは、
ウイルスとの戦争の記録ではない。

ウイルスとの共同作業の歴史
なのだ。

そして私たちは、
その最新バージョンとして、
今ここに生きている。