世界経済は「量」から「質」へ向かっている
世界経済はいま、静かだが決定的な転換点に立っている。
20世紀後半から21世紀初頭にかけて、中国は「世界の工場」であり、「世界の市場」であり続けた。
その圧倒的な規模と速度は、世界経済の重心そのものを中国へと引き寄せた。
しかし、歴史は常に一方向には進まない。
中国が築き上げたその役割は、いま次なるフロンティアへと引き継がれつつある。
インド、そしてアフリカ。
21世紀後半を見据えたとき、この二つの地域は避けて通れない存在となった。
次の成長を担う「若さ」と「跳躍」
インドはすでに人口で中国を追い越し、世界最大の人口国家となった。
だが重要なのは数ではない。
その内訳、すなわち圧倒的な若年人口である。
デジタルID、電子決済、行政のオンライン化――
いわゆる「インディア・スタック」は、旧来の制度を一気に飛び越え、
製造業だけでなくIT・サービス分野でも世界を牽引し始めている。
インドはもはや「次の中国」ではない。
それとは異なるロジックで成長する、新しい文明型経済圏である。
一方、アフリカはさらに長い射程を持つ。
今世紀後半、世界人口の4人に1人がアフリカ人になるという予測は、
単なる人口論ではなく、世界経済の構造変化を示す予言に近い。
アフリカでは、固定電話や銀行網を経ず、
いきなりスマートフォン決済が社会基盤となった。
この「リープフロッグ現象」は、
遅れているのではなく、別ルートで進化していることを意味する。
世界はこれから、
中国の「規模」
インドの「活力」
アフリカの「跳躍」
という三層構造へと移行していく。
日本という「未来の先行体験国」
この大きな流れの中で、日本はどこに立つのか。
答えは意外なほど明確である。
日本は、世界で最も早く「超高齢社会」に突入した国だ。
それは長らく「失われた未来」の象徴のように語られてきた。
しかし視点を変えれば、日本は未来を先に経験している国でもある。
人口減少、高齢化、医療費の増大――
これらは日本固有の問題ではない。
中国も、欧米も、そしていずれインドも直面する課題だ。
だからこそ、日本が示すべき道は明確になる。
それは「健康・長寿」を個人の幸福に留めず、
社会システムとして成立させることである。
「健康寿命」という新たな産業
ただ長く生きることに価値はない。
自立し、役割を持ち、尊厳を保って生きられるか。
そこにこそ、次世代の経済価値が生まれる。
予防医療、再生医療、栄養学、介護ロボット、ウェルビーイング設計。
日本はすでに、その実証データを世界で最も多く蓄積している国だ。
さらに重要なのは、高齢者が社会から退場しない仕組みである。
働き、学び、支え合い続ける社会設計は、
これから高齢化を迎えるすべての国にとっての「教科書」となる。
信頼という、日本の最終資本
経済は、最終的には信頼で動く。
「日本産=安全・高品質・健康的」というブランドは、
すでに世界共通語となっている。
インドやアフリカの中間層・富裕層にとって、
日本が提示する生活モデルは、
単なる商品ではなく未来の設計図となり得る。
役割が分かれることで、世界は成熟する
中国が「量」で世界を支えた時代は終わりつつある。
これからは、
インドとアフリカが「動力」となり、
日本が「生活の質の最適解」を示す。
世界経済は、単一の覇権ではなく、
役割分担によって成熟する段階へと入った。
日本はすでに未来を生きている。
あとは、その経験を世界に翻訳できるかどうか。
そこに、この国の次の使命がある。
作品名:世界経済は「量」から「質」へ向かっている 作家名:タカーシャン



