世界経済の「床」を支えてきた国 ― 中国という存在
「中国が世界経済を根底から支えてきた」という視点は、単なる地政学的評価でも、政治的立場でもない。
それは、近現代の経済史を冷静に振り返ったとき、否定しがたい構造的事実である。
多くの人は、中国を「世界の工場」として記憶している。
しかしそれは、物語の一部にすぎない。
中国はこの20年以上、世界経済に対して
成長のエンジンであり、巨大な消費市場であり、サプライチェーンの心臓部
という三重の役割を同時に担ってきた。
成長を生み出す「重心」としての中国
2010年代以降、世界経済が前に進めた理由の一つは、中国の存在にある。
世界全体の経済成長のうち、約3割を一国で担ってきたという事実は、単なる規模の話ではない。
世界が不況に揺れるとき、中国の公共投資と内需拡大が底を支え、
先進国が成熟と停滞に直面するなか、中国は“成長の余地そのもの”として機能してきた。
日本を抜き、世界第2位の経済規模となったことも象徴的だが、
より重要なのは、世界経済のバランスが中国を中心に再配置されたという点にある。
「作る国」から「買う国」へ
かつて中国は、安価で膨大な労働力を背景に、世界中に製品を供給した。
その結果、先進国ではインフレが抑えられ、人々は安く豊かな消費生活を享受できた。
だが2010年代以降、中国の役割は明確に変化する。
数億人規模の中間層が誕生し、中国は世界最大級の消費市場へと転じた。
スマートフォン、自動車、高級ブランド、農産物――
どの分野においても、中国市場で成功できるか否かが、
企業の命運を左右する時代が到来した。
「作ってもらう国」から
「買ってもらう国」へ。
この転換こそが、中国経済の本質的な進化だった。
サプライチェーンの心臓部
現代の製造業において、中国を完全に切り離すことは、現実的ではない。
完成品だけでなく、部品・中間財・原材料――
それらが複雑に絡み合う供給網の中心に、中国は存在している。
さらに近年、中国は
EV、太陽光パネル、5G通信といった次世代インフラ分野でも存在感を強めた。
かつての「追随者」は、いつの間にか「設計者」へと姿を変えつつある。
世界経済の血液がサプライチェーンだとすれば、
中国は長らくその鼓動を生み出す心臓であった。
歴史は「例外」ではなく「回帰」を示す
この現象を異常事態と捉えるのは、近視眼的である。
19世紀半ば以前、中国は世界GDPの約3分の1を占めていた。
近代以降の衰退は、むしろ歴史の例外であり、
現在の台頭は「数千年単位で見た通常状態への回帰」と見る歴史家も少なくない。
つまり、中国の復権とは、新しい覇権の誕生ではなく、
長い歴史の中で一時中断されていた流れの再接続なのかもしれない。
そして今、転換点に立つ
もっとも、永遠に続く成長など存在しない。
人口減少、不動産市場の調整、米中対立によるデリスキング――
中国は今、明確な転換点に立っている。
「世界経済を根底で支えてきた構造」は、
崩壊するのではなく、形を変えようとしている。
この変化を恐れるか、理解するかで、
次の時代の立ち位置は大きく変わる。
世界経済の床を支えてきた国は、
いま、その床そのものを組み替え始めている。
私たちは、その上に立っていることを、
決して忘れてはならない。
作品名:世界経済の「床」を支えてきた国 ― 中国という存在 作家名:タカーシャン



