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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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霧が晴れる場所へ戻るということ

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霧が晴れる場所へ戻るということ

人生がうまくいかないと感じるとき、人はたいてい「前を見よう」とする。
目標を立て、理想を掲げ、未来を描こうとする。
だが、その多くは霧の中で地図を広げているようなものだ。
現在地が分からないまま、行き先だけを語っても、心の霧は濃くなる一方である。

心の霧の正体は、不安でも弱さでもない。
自分がどこに立っているのか分からないこと。
それだけだ。

だから必要なのは、答えでも希望でもない。
まず現在地を明確にすること。
評価をせず、反省もせず、意味づけもせず、
「私はいま、ここにいる」と正確に指差すことだ。

現在地とは、肩書きでも年齢でもない。
外側の状況、内側の状態、そして時間に対する視線。
この三つが交わる一点である。

状況はどうなっているか。
心と体はどんな状態か。
視線は過去を向いているのか、未来を向いているのか、それとも今か。

これを静かに確認するだけで、霧は少しずつ薄れる。
遠くは見えなくても、足元が見え始める。
足元が見えれば、進む必要がない道、無理をしていた方向、
本当に困っている一点が浮かび上がってくる。

大切なのは、霧が晴れたあとに見えるものである。
頭で決めた行き先ではない。
人に勧められた幸福でもない。
霧が晴れたその場所から、自然に見えてくる風景だけが、次の一歩を決める資格を持つ。

それでも霧が晴れないことはある。
そんなとき、人は前進しようとしてはいけない。
必要なのは後退ではなく、原点回帰だ。

原点とは、成功した過去でも、若さでも、理想でもない。
まだ何も決めていなかった地点。
役割や正解を背負う前の、自分の感覚だけが残っている場所である。

霧の中で進み続けると、言葉が増え、説明が増え、正当化が増える。
それは迷っている証拠だ。
そんなときは、立ち止まり、戻る。
霧が薄くなる地点まで、何度でも。

原点に戻ると、言葉は減り、代わりに違和感が戻ってくる。
「これは違う」という感覚が、はっきりする。
原点はYESの場所ではない。
NOが正確になる場所なのだ。

成熟した人ほど、戻る回数が多い。
そして、戻るのが早い。
それは弱さではなく、壊れないための知性である。

人生は前に進むことで拓けるのではない。
見える状態に戻ることで、自然に動き出す。

霧が晴れなければ、原点に戻る。
何度でも。
それが、自分の人生を見失わないための、最も確かな方法なのだ。