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タカーシャン
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novelistID. 70952
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安心と安全の先で、人は何を失ったのか

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安心と安全の先で、人は何を失ったのか

私たちは今、かつてないほど
安心と安全を重視する社会に生きている。

危険は事前に予知され、
失敗はデータで回避され、
人生はできる限り設計される。

事故は減り、効率は上がり、
可能性は「理論上」最大化された。

それ自体は、
人類が積み重ねてきた知恵の成果でもある。

しかし、
この完璧さの裏側で、
静かに失われているものがある。

それは
人間力だ。

転ばぬように敷かれたマットの上では、
人は足腰を鍛えなくなる。
ぶつからない距離を保てば、
関係性の摩擦から学ぶ機会は消える。

傷つかないことが善となり、
挑戦しないことが賢さと呼ばれる。

その結果、
失敗しない人間は増えたが、
立ち上がれる人間は減った。

人生設計が精密になるほど、
想定外を受け止める胆力は育たない。
危険を排除するほど、
覚悟を持つ理由も失われていく。

そして、この流れは
社会全体にも影を落としている。

人口減少は、
経済や制度だけの問題ではない。
それは
「生きることへの踏み出し」を
人が無意識にためらっている
心の現象でもある。

失うことが怖い社会では、
始めること自体がリスクになる。
関係を持つこと、
家庭を築くこと、
命をつなぐことさえ、
計算の対象になってしまう。

だが、人は本来、
計算だけで生きる存在ではない。

少しの無駄、
少しの危うさ、
少しの余白があってこそ、
人は人になる。

個性の棘を抜きすぎれば、
誰も傷つかないが、
誰の心にも届かない。

安心と安全は守るべきものだ。
だが、
それだけを目的にした社会は、
人を静かに小さくしてしまう。

これから必要なのは、
「守る勇気」だけでなく、
「踏み出す勇気」を許す社会だ。

転んでもいい。
ぶつかってもいい。
やり直せばいい。

そう思える空気こそが、
人間力を育て、
未来を増やしていく。

安心の先に、
挑戦が息づく場所を。
安全の内側に、
生きる熱を取り戻すために。