人生の低体温症 ―― 風と雨の正体
人生で人が壊れるのは、
大きな不幸に遭ったときだと思われがちだ。
だが実際は違う。
人は、
吹き続ける風の中に
濡れたまま立たされ続けたときに壊れる。
人生にも、風がある。
それは怒鳴り声のような暴力ではない。
否定、比較、正論、空気、評価、監視。
一つひとつは軽く、
「気にするほどではない」と言われるものばかりだ。
しかし、それらは止まない。
毎日、少しずつ、
体温のように心を奪っていく。
雨が降るときもある。
失敗した日。
疲れ切った夜。
孤独を感じた瞬間。
自分を信じられなくなったとき。
心が濡れている状態だ。
このときに風が吹くと、
人は急速に冷える。
それが「人生の低体温症」。
突然壊れたように見える人は、
突然ではない。
ずっと、吹かれ続けていただけだ。
人はよく、
「もっと強くなれ」と言う。
だが人生において必要なのは、
厚着のような強さではない。
必要なのは、
通さないことだ。
境界線を引くこと。
距離を取ること。
離れること。
何も言われない場所へ身を移すこと。
これは逃げではない。
生存の選択だ。
真面目な人ほど、
優しい人ほど、
風を通してしまう。
「自分が我慢すれば」
「これくらい普通だ」
そう言いながら、
体温を差し出してしまう。
人生を回復させるのは、
励ましの言葉でも、
成功体験でもない。
まず必要なのは、
吹かれない時間。
濡れない場所。
奪われない環境。
順番を間違えると、
どんな正論も冷風になる。
人生の寒さの正体は、
不幸ではない。
失敗でもない。
無防備な状態で、
吹き続けられることだ。
もし今、
「自分は弱いのではないか」と
感じている人がいるなら、
それは違う。
あなたは、
風にさらされすぎただけかもしれない。
まずは、
風を遮ろう。
乾かそう。
暖めるのは、そのあとでいい。
人は、
守られたときにしか、
本当には立ち上がれないのだから。
作品名:人生の低体温症 ―― 風と雨の正体 作家名:タカーシャン



