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タカーシャン
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novelistID. 70952
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正月は、短くなったのではない

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正月は、短くなったのではない

正月は、もっと長かった気がする。
実際の日数の話ではない。
体感として、心として、確かに長かった。

昔の正月は、社会そのものが止まっていた。
商いは休み、役所は閉まり、街は静かだった。
やるべきことがないことを、誰も責めなかった。

だから人は、休もうと意識しなくても休めた。
去年と今年のあいだに、ぽっかりとした空白があった。
その余白が、心を元に戻してくれていた。

今の正月はどうだろう。
年末ぎりぎりまで仕事を詰め込み、
年始早々に予定と連絡が押し寄せる。

正月は「止まる時間」ではなく、
「イベントをこなす期間」になった。

帰省、挨拶、買い出し、移動。
楽しいはずのことに追われ、
気がつけば、休んだはずなのに疲れている。

仕事始めの日、
「もう一度休みたい」と感じる人は多い。
それは怠けではない。
正月が、心を回復させる役割を果たしていないだけだ。

正月が短くなったのではない。
正月が、機能しなくなったのだ。

区切りが消えた社会では、
人は切り替わることができない。
切り替われないまま走り続ければ、
心は摩耗する。

だから今、必要なのは
正月を増やすことではない。

「自分の正月」を取り戻すことだ。

誰にも会わない時間。
何もしない時間。
今年の目標を決めない時間。
去年を、ただ静かに終わらせる時間。

たとえ半日でもいい。
そこで心は、ようやく立ち止まる。

余白は、贅沢ではない。
遊びは、怠慢ではない。
それがなければ、人は人でいられない。

正月とは、本来、
一年に一度、社会が人に許してくれた
「何者でもなくていい時間」だった。

それを失った今、
私たちは自分の手で、
小さな正月をつくるしかない。

止まる勇気を持つ人から、
新しい一年は、静かに始まっていく。