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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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すべてに影響を与える風

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すべてに影響を与える風

風は、目に見えない。
けれど、触れないものは何一つない。

山の形を変え、雲を流し、季節の境目を曖昧にする。
自然環境に吹く風は、いつも静かに、しかし確実に世界を動かしている。

不思議なことに、同じ風が人の心にも吹く。

理由はないのに落ち着かない日。
急に居心地が悪くなる人間関係。
昨日まで平気だった価値観に、今日になって息苦しさを覚える瞬間。

それは失敗でも、弱さでもない。
心の中の「気圧」が変わっただけだ。

風は、変化そのものではない。
変化を起こさずにはいられなくする力だ。

どこかに偏りが生まれ、
どこかに無理が溜まり、
どこかにズレが広がったとき、
風は自然に吹き始める。

だから風は、均衡を壊す。
だがそれは破壊ではなく、
古くなった配置を終わらせるための動きにすぎない。

人は安定を好む。
同じ場所、同じ関係、同じ自分でいられることに安心する。
だから風を恐れる。
「今」を吹き飛ばされる気がするからだ。

しかし本当は、
吹き飛ばされるのは“今”ではなく、
すでに役目を終えた均衡なのだ。

風を止めることはできない。
できるのは、どう向き合うかだけ。

帆を張るか、
身を低くするか、
あるいは進路を変えるか。

風を敵と見るか、
合図として受け取るか。

風は何も命令しない。
「変われ」とも、「進め」とも言わない。
ただ静かに告げる。

――もう、同じ場所にはいられない。

自然がそうであるように、
心もまた、止まり続けることはできない。

今、もし心の中に風が吹いているなら、
それは壊れる前触れではない。
次の配置へ向かうための、
避けられない動きが始まったというだけのことだ。

風は、いつも先に吹く。
変化は、そのあとから、必ずついてくる。