「最も厳しかった世代」に生まれたという事実
――就職氷河期世代の現在地と、これからの備え
「努力が足りなかったんじゃないか」
「自己責任だったんじゃないか」
就職氷河期世代は、長い間そう言われ続けてきた。
しかし、統計と時代背景を冷静に見れば、個人の問題説明できない“構造的な不運”が、この世代に集中していたことがわかる。
とりわけ、2025年現在で43歳から49歳。
1976年〜1982年生まれの層は、氷河期の中でも「最も厳しい条件が重なった世代」とされている。
超氷河期という社会に出る最悪のタイミング
この世代が社会に出た1999年〜2003年前後は、就職市場が完全に冷え切っていた。
有効求人倍率は0.4〜0.5倍台。
仕事を探す人が2人いても、椅子は1つあるかどうか。
努力以前に、そもそも座る場所がなかった時代だ。
新卒で正社員になれなかった人は、派遣やフリーターとして働き始めるしかなかった。
「とりあえず働いていれば、いずれ正社員になれる」
多くの人がそう信じていたが、その“いずれ”は簡単には来なかった。
人が多すぎたという不運
さらに、この世代は人口ボリュームが大きい。
団塊ジュニアとその直後に生まれ、受験も就職も常に過密競争だった。
景気は最悪、椅子は激減、ライバルは最多。
成績優秀でも、真面目でも、内定が出ない。
ここには、本人の資質ではどうにもならない現実があった。
キャリアの空白が、そのまま年齢になった
氷河期世代は、気づけば40代後半に差し掛かっている。
30代前半で正社員になれなかった人は、
「35歳の壁」という見えない天井に阻まれた。
能力ではなく、年齢で線を引かれる社会が、再挑戦を難しくした。
その結果、今も非正規で働き続ける人、
親の年金に頼らざるを得ない人、
いわゆる「8050問題」の当事者になっている人も少なくない。
老後不安は、すでに現実の問題になっている
この世代の老後が厳しいと言われる理由は明確だ。
・年金額が低い
・退職金が期待できない
・持ち家がなく、住まいが不安定
これは「将来の話」ではなく、今の働き方の延長線上にある現実だ。
単身者が多いことも、リスクを高めている。
誰にも気づかれず、孤立する――
老後の最大の敵は「お金」以上に、「孤独」かもしれない。
社会は、ようやく動き始めている
この状況を放置すれば、生活保護が急増する。
国もそれを理解し、対策を進め始めている。
見守りサービス、居住支援、相談窓口の整備。
短時間労働でも社会保険に加入できる制度拡充。
学び直しへの給付金制度。
完璧ではないが、使える制度は確実に増えている。
だからこそ、今できることがある
氷河期世代に必要なのは、根性論でも自己責任論でもない。
・iDeCoやNISAで、少額でも備える
・社会保険に入れる働き方を選ぶ
・年齢に左右されにくいスキルを身につける
・そして、制度を「遠慮なく使う」
これは甘えではない。
社会の歪みを、個人が背負わされてきた結果なのだから。
この世代は、
バブルの恩恵もなく、
回復期の波にも乗れず、
気づけば「自己責任」と言われてきた。
だが、事実は違う。
最も厳しい谷間に生まれ、そこで必死に生き延びてきた世代なのだ。
だから一人で抱え込まなくていい。
制度を使い、繋がりを持ち、
生き延びること自体を、誇っていい。
これは、敗者の物語ではない。
耐え抜いてきた世代の、現在地の記録である。
作品名:「最も厳しかった世代」に生まれたという事実 作家名:タカーシャン



