心に隙間のない病
それは性格の問題ではない。
心に隙間のない病である。
この病は、ウィルスのように飛沫では感染しない。
耳から入って、心に伝播する。
怒号、罵声、正義を振りかざした言葉。
それらは鼓膜を越え、
聞かされる側の心を少しずつ壊していく。
叫んだ本人は「正しいことを言っている」と信じている。
そこに一切の迷いがない。
それが、この病の最も危険な点だ。
確信に満ちた正しさ。
凝り固まった思考。
違う考えは、微塵も入らない。
訂正も、説明も、対話も届かない。
なぜなら、心に余白がないからだ。
それはまるで、
火花一つで爆発する火薬の塊のような状態だ。
外から見れば不安定で危険なのに、
本人だけは「自分は正気だ」と信じている。
だが、その爆発の被害を受けるのは、
いつも立場の弱い人、逃げ場のない人だ。
怒りは発散ではない。
正しさも免罪符ではない。
心に隙間がない社会は、
静かに人を壊していく。



