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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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正確すぎる国で、なぜ失敗が増えるのか

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正確すぎる国で、なぜ失敗が増えるのか

日本のロケット打ち上げ失敗が報じられるたび、
私は技術の問題よりも、もっと根の深いものを感じてしまう。

日本は、真面目な国だ。
正確で、几帳面で、想定を重ね、対策を重ねる。
失敗しないために、失敗しないために、失敗しないために。

だが皮肉なことに、
その「正確さ」そのものが、失敗を呼び込んでいるのではないか
そんな疑念が拭えない。



対策が精密になればなるほど、
人は「想定内」しか見なくなる。

マニュアルに書かれていない異変、
数値には出ない違和感、
説明しにくい不安。

それらは次第に
「気のせい」
「まだ問題ではない」
「余計なこと」
として処理されていく。

正確であるがゆえに、
問題は存在しないことにされる。



真面目な組織ほど、失敗は罪になる。

失敗は反省文になり、
責任追及になり、
評価を下げる材料になる。

だから人は黙る。
「何かおかしい」と思っても、
「今さら言っても」と飲み込む。

その沈黙が積み重なり、
ある日、取り返しのつかない形で噴き出す。

ロケットは一度しか飛ばない。
だが、人の心も、人生も、
実は同じように一発勝負だ。



これは技術の話ではない。
人間の話だ。

真面目な人ほど、
ちゃんとやろうとする人ほど、
自分を追い詰めていく。

間違っていない。
努力している。
正しいことをしている。

それでも、ある日突然、
心が動かなくなる。

なぜか。
正しくあろうとしすぎて、
自分の違和感を切り捨ててきたからだ。



本当に必要なのは、
完璧な対策ではない。

少しの雑さ、
少しの余白、
少しの「まあいいか」。

ズレる前提、
壊れる前提、
失敗する前提。

その不完全さこそが、
次の修正を可能にする。



正確すぎる社会では、
人も壊れやすくなる。

だから私は思う。
生き残るのは、
一番正しい人ではない。
一番しなやかな人だ。

ロケットも、人も、
少しゆるいほうが、
遠くまで飛べる。