わたしを乗せたバスは国道から左側に折れた。車内は熱帯温室のように暑く、マフラーを外してお菓子をこっそり食べた。やがて減速しながら娯楽施設が連なるエリアへと入る。ボウリング場は廃棄場の一部、埋め終えた跡地に建てられていた。建物の先端にはシンボルである全長15メートルのティラノサウルス・レックスが屹立している。圧倒的な姿、捕食する為だけに進化した機能。それを最初に見たのは恐竜図鑑だった。わたしの目に映ったその造形はひどく衝撃だったのだと思う。翌日から原因不明の熱に冒された。全身を包むように部屋の中は宇宙のように膨張し、そして歪んだ。夢で見続けたのは精密なフォルム、ティラノサウルスの絶望的に縮小した手が印象的だった。どう表現すればいいのか、獰猛に食い殺すその姿が優雅に感じた。エレガントさを兼ね備える肉食恐竜、地上最強の生物だ。かつてイビチャ・オシム元サッカー日本代表監督が言った「エレガントな」という言葉がいつも心の中にあった。わたしの魅了されたものに似ていると、そう思ったからだ。