確率0から始まる場所
何かを始める前、
私たちはつい「うまくいく確率」を考える。
成功率、失敗率、勝算。
けれど冷静に考えてみると、
行動していない時点では確率は常に0だ。
やらなければ、当たることも外れることもない。
評価も、失敗も、物語も生まれない。
確率とは才能の問題ではなく、
動いた瞬間に初めて発生する数字なのだ。
行動率という言葉がある。
やるか、やらないか。
そして稼働率。
どれだけの時間、どれだけの密度で動いているか。
ここまでは、まだ「量」の話だ。
ところが、動き続けていると
ある瞬間から変化が起きる。
スピードが上がるのだ。
スピードが上がると、
人は不思議なほど考えなくなる。
失敗したらどうしよう、
評価されたらどう見られるか、
そんな思考が入る余地がなくなる。
考える前に体が動く。
手が先に進み、口が先に言葉を出す。
気づけば、集中しようなどと思っていないのに
集中している自分がいる。
その集中の正体は、
特別な才能でも、強い意志でもない。
それはただ
「今、この一点」に立っている状態だ。
目的も、結果も、過去も未来も消え、
残っているのは
「やっている」という事実だけ。
うまくやろうとしない。
評価されようとしない。
ただ、やっている。
この地点に入ると、
人は妙に強く、しなやかになる。
失敗しても折れにくく、
うまくいっても驕らない。
多くの人が
「集中力を高めたい」と言う。
けれど集中力は、
作るものではなく、結果として生まれるものだ。
確率0を恐れずに動くこと。
行動を重ね、スピードを上げること。
その先で、思考が静まり、
自然と辿り着く場所。
それが、
確率が生まれ、人生が動き出す
集中点なのだ。
作品名:確率0から始まる場所 作家名:タカーシャン



