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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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100倍の豊かさと、痩せた根

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この100年で、人類の所得はおよそ100倍になった。
数字だけを見れば、経済は疑いようもなく豊かになったと言えるだろう。
高く積み上がったビル群、便利さに満ちた生活、情報は瞬時に世界を巡る。
だがそれは、あくまで「上部の栄」であり、楼閣である。

木はたしかに、たわわに実っている。
枝は広がり、果実は豊かで、見た目は壮観だ。
しかし、その根はどうだろう。
細く、弱く、乾いた土に頼りなく伸びてはいないか。
少し強い風が吹けば、いつ倒れてもおかしくない――それが現代社会の実情である。

生命を支える土壌が、あまりにも貧相なのだ。
思想、哲学、宗教、倫理。
人間が「なぜ生きるのか」「何を大切にするのか」を問い続けてきた領域が、十分に耕されていない。
効率や成長は語られても、存在そのものへのまなざしは後景に追いやられている。

その結果、社会は分断を常態化させた。
勝ち組と負け組、正しさと誤り、内と外。
だが真実の思想は、本来そうした線引きを求めない。
真実の思想は、常に「繋がり」を志向し、分断を許さないものである。

根が深く張られた木は、嵐に耐える。
見た目が派手でなくとも、倒れない。
私たちが今、本当に必要としているのは、さらに高い楼閣ではない。
生命の土壌を耕し直すこと。
人と人が、思想と思想が、再び根でつながることなのだ。