小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

SNSという井戸の底で、世界を語る人たちへ

INDEX|1ページ/1ページ|

 
国際ニュースのコメント欄を眺めていると、奇妙な感覚に襲われる。
世界を語っているはずなのに、聞こえてくるのは極端に狭い半径の声ばかりだ。

彼らは世界を見ていない。
自分の不安と怒りを、世界に投影しているだけである。

SNSは、無知を露呈させる場所ではない。
むしろ、無知を自信に変換できる装置だ。
知らないことを、調べる必要はない。
理解できないことを、保留する必要もない。
断定すればいい。怒ればいい。
それだけで「意見を持つ人間」に見える。

国際問題は、本来、軽々しく語れる代物ではない。
一国の選択の裏には、何十年、何百年という歴史が沈殿している。
だがSNSでは、その重みはすべて削ぎ落とされる。

残るのは、
「損か得か」
「敵か味方か」
という、幼稚な二択だけだ。

これは知性の問題ではない。
想像力の欠如である。

他国の生活を想像できない。
他民族の恐怖や屈辱を想像できない。
それでも、世界を裁こうとする。

日本社会は長く、
「外を見なくても回る社会」であり続けてきた。
外国人と対話せずとも、
他国の視点を知らずとも、
人生は成立してしまう。

その結果、
自国の常識を疑う筋肉が育たなかった。

SNSは、その未発達な筋肉をむき出しにする。
鍛えていない腕で、世界を持ち上げようとするから、
乱暴で、雑で、危うい言葉になる。

そしてもう一つ、決定的な事実がある。
本当に国際感覚を持つ人間は、SNSで吠えない。

世界を知るほど、
「簡単な答えなど存在しない」ことを知る。
知れば知るほど、
断言することが恥ずかしくなる。

だから彼らは沈黙する。
沈黙した人間は、可視化されない。

結果として、
世界を知らない声だけが、世界を代表しているように錯覚される。

SNSは民主的に見えて、
実は最も思考の浅い声が支配する空間だ。

強い言葉は、考え抜かれた言葉より速く走る。
怒りは、理解よりも拡散されやすい。
そして人々は、
複雑な現実より、
分かりやすい敵を欲しがる。

だが、ここで立ち止まらねばならない。
この構造を放置すれば、
私たちは世界を語れない社会になる。

他国を見ているつもりで、
実は自分の内側しか見ていない。
その姿は、
国際社会において最も危険な存在だ。

SNSの喧騒に違和感を覚える人間が、
まだこの社会に残っていることを、
私は希望だと思いたい。

世界を語る前に、
自分の視野の狭さを疑えるか。
その問いを失った瞬間、
人は世界ではなく、井戸の底から叫ぶ存在になる。