わたしは夢のなかで海に行くことにした。破壊したコンビナートを見てみようと思ったからだ。そのピカピカ光る勇敢で、戦艦もしくはテントウ虫に酷似した姿を遠方から眺め、まだその力が残っているならば、生き残りのテントウ虫達が煙を吐き出しながら殺虫剤を製造し続けている。という事を確認したいと思った。絶望するには早い、力強さとしたたかさがあれば再生するだろう。祈る。わたしの中で、不定形な何かが生まれていた。電車は海沿いの緩やかなS字カーブを走る。適当な駅で下車すると、動物愛護団体が署名活動を行っていた。すり抜けるように離脱する、そのまま先へと向かった。海は晴れているのにひどく荒れていて、白い飛沫がラインのように繰り返していた。ゆっくりと見下ろすように光景を眺める。わたしは夢のなかで、あの場所に火薬を仕掛けて逃亡をしてきたのだ。バリケードを突破して衝動のままに行動する。あの時、炎を背中に震えるように美しい犬(陰鬱なる私自身)を撲殺した。強風が全身を叩き、一定の間隔でコンビナートの煙突からゆらぎが見えた。やや右辺りで連鎖パターンが途切れる。多分、あれがわたしの破壊した部分だ。砂が風に舞ってキラキラと反射した。帰りの電車内から、工場地帯のシルエットを見ていた。ふいに鼓動が激しくなって、頭に浮かぶその言葉を口にする。「あの犬(私)は解放されたのだ」躍動するようなキラメキが頭を離れなかった。