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タカーシャン
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novelistID. 70952
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今年の漢字― 熊と米 ―

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今年の漢字 ― 熊と米 ―

社会が生んだ“怒りの象徴”

今年を象徴する漢字を選ぶなら、私は迷わずこの二つを挙げる。
「熊」と「米」である。

本来、熊は山に、米は田にあるべきものだ。
しかし今年、その二つが妙なかたちで私たちの日常に割り込んできた。
そして同時に、私たちの心の闇を暴いた。

米が高い。それは生活そのものへの侮辱だ。

米は日本の基準だ。
「米が高い」という現実は、
ただの物価上昇ではなく、
“生活の根本を軽視した社会の怠慢”そのものである。

賃金は上がらないのに、
生活費だけ静かに、しかし確実に跳ね上がる。
この国の政策と構造は、
国民の暮らしを守る方向に向いているように見せかけて、
実際には企業と市場だけを太らせてきた。

米の値段が揺らぐというのは、
「国が生活の芯を支える力を失っている」証拠である。

そして、その揺らぎは、
国民の心に不安、焦り、苛立ちとして沈殿する。

その怒りの化身が“熊”として姿を現している。

今年、全国で熊の出没が相次いだ。
異常気象、餌不足、山の荒廃、里山の崩壊。
これを自然の問題だけに押しつけるのは簡単だ。

だが実際は違う。

人間が自然を追い詰め、
そのしわ寄せが獣の姿で返ってきているだけだ。

私たちの心もまた同じだ。
行き場を失った怒りや不安は、
姿を変えて社会に噴き出す。
暴力でもなく、声でもなく、
ただ黒い影となって現れる。

熊はその象徴であり、
「あなたたちの社会はもう限界だ」と
突きつけるメッセンジャーのようでもある。

熊と米は、社会の怠慢と個人の限界が結びついた“警告の二文字”。

高くなる米。
荒れる自然。
余裕を失う生活。
むき出しになる怒り。
つながらない人々。
助け合わない社会。

そして最後に現れるのは、
原因ではなく、結果としての“熊”だ。

熊が悪いのではない。
米が高いことが悪いのではない。
私たち自身が作り上げた社会の歪みが、
ついに形になって見えてきただけだ。

今年の二文字は、
この国に静かに告げている。

――もう誤魔化すな。
  根本から作り直せ。
  米の値段も、自然も、人の暮らしも。

熊の影は、社会の影。
米の値は、生活の叫び。

今年の文字は、そういう意味である。