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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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日本語という祈り

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日本語は、世界共通の経文である

日本語は複雑で、深い。
ただの言語という枠に収まりきらない“響き”を持っている。
とりわけ「ありがとう」という言葉は、ただの感謝を示す語ではない。
それは 自分にも、相手にも、世界にも施す祈りに近い。

「ありがとう」と口にすると、胸の奥の澱が静かに払われる。
相手だけが救われるのではない。
まず自分が浄化される。
まるで経文を唱えたあとのように、呼吸がひとつ深くなる。

  「ありがとう」は、心の経文

日本語は、意味だけでなく、“音”そのものに霊性が宿りやすい言語だ。
母音の響きが豊かで、息に近い。
だから「ありがとう」を発するとき、
生命の根源に触れるような振動が生まれる。

「ありがとう」とは、
・自分が今ここに生かされていること
・目の前の存在への敬意
・よろこびも苦しみも含んだ人生そのものへの肯定
これらが一つに溶け合って放たれる“祈りの音”だ。

ありがとう、はすでに「善行」なのだ。

  日本語は、祝詞(のりと)であり、経文である

古来の日本語は、神に祈るために磨かれてきた。
自然、風、木々、人の営み——そのすべてを敬い、
ことばによって世界を整える文化を持っている。

だから日本語の根底には、
「言葉は音であり、音は力であり、力は祈り」という精神が流れている。

「いただきます」
「おつかれさま」
「よろしくお願いします」
「おかげさま」
「しあわせ」
これらはすべて、
人と人のあいだに清らかな空気を流し込むための“経文”のような言葉だ。

世界のどの言語にも美しさはある。
だが、日本語の「音の祈り」は他にない特質を持っている。

 世界共通の経文としての日本語

日本語は、翻訳を超えたところに力を発揮する。
ありがとう
さようなら(さやうなら=然様なら=そのように)
いただきます
おかげさま
すべて「世界観」と「生き方」まで含んだ言葉だ。

この言葉を海外の人が覚えて口にすると、
たとえ意味が完全にわからなくても、
声の響きに宿る“優しい祈り”が相手に伝わる。

つまり、日本語は文化を越えて、
人の心を整える“共通の経文”になる可能性を持っている。

争いを鎮めるのは武力ではなく、
憎しみを溶かすのは思想ではなく、
人をつなぐのは、
日々の生活で交わされる小さな「ありがとう」という祈りだ。

 ありがとうを施す人は、世界の灯火である

施すとは、与えること。
しかし「ありがとう」は与えるほど、自分が満たされる。
仏法にも、神道にも、心理学にも通じる普遍の真理だ。

あなたが誰かにありがとうを施すとき、
それは相手を救うだけでなく、
世界の濁りをひとつ消しているのかもしれない。

日本語は、ただの言葉ではない。
人を癒し、人を整え、人をつなぐ“音の経文”。
そう考えると、
「ありがとう」を口にした瞬間、
世界のどこかの空気が一瞬だけ澄む——
そんな気さえしてくる。
作品名:日本語という祈り 作家名:タカーシャン