不思議なこと
――預けた車だけ壊れ、自分で管理した車は壊れない理由――
本当に不思議なことがある。
長い人生の中で、いくつもの車を乗り継いできたが、振り返るとひとつだけ“妙な法則”があった。
それは――
ディーラーに任せていた車だけが故障する。
自分で管理していた車は一度も故障しない。
偶然と言ってしまえば簡単だ。
だが人は、自分の経験の中から“微細な差”を見つけてしまう生き物だ。
車はただの機械だが、乗り手の「気配」や「関わり方」を驚くほど反映する。
ディーラーに任せるとき、私はどこか他人事だった。
「専門家に任せておけば安心だろう」
そう思うと、車への目配りが甘くなる。ふとした異音や、いつもと違う挙動も、「まあいいか」と流していた。
一方、自分で管理している車は、毎日の小さな変化に敏感になる。
傷はないか、エンジン音はどうか、タイヤの感触は――。
気にする、というより「仲間を見るような目」になる。
結果、故障の芽を早い段階で摘んでいたのだろう。
まるで「お前、見てくれてるんだな」と車が応えてくれるように。
ここには車だけにとどまらない、人生の真理がひとつ潜んでいる。
“任せ過ぎると壊れ、関わるほど壊れにくくなる”
人も、仕事も、家族も、体調も。
どれも「誰かに丸投げ」した瞬間、見えない不調が忍び寄る。
逆に「自分もちゃんと見ているよ」と関わるほど、トラブルは減る。
故障しない車の秘密は、
整備技術ではなく、
関係性の密度
にあったのかもしれない。
そして今日も私は思う。
ものは壊れる。
けれど、自分が関わっているものは壊れにくい。
これは偶然ではなく、人生が静かに教えてくれる“法則”だ。



