「騙されたでは済まない時代に」
近年の特殊詐欺事件は、もはや「高齢者を狙った犯罪」では終わらない。
その構造は巧妙に分業化され、受け子・出し子から闇サイト募集に至るまで、
まるで「裏のビジネスモデル」として成立している。
驚くべきは、その中に「被害者が加担者に変わる」構図があることだ。
最初は善意の協力、あるいは小遣い稼ぎのつもりだった──
だが気づけば、他人の通帳を受け取り、資金の受け渡しを行い、
結果として犯罪の一部を担うことになる。
「騙された」では済まされない現実。
犯罪グループにとって、こうした“無自覚な協力者”こそ最も利用しやすい存在だ。
つまり、被害と加担の境界線は、もはや紙一重になっている。
今必要なのは、警察の取り締まりや啓発だけではない。
個人レベルでの“積極的防御”──
すなわち「誰でもだまされうる」という自覚から始まる思考のセキュリティだ。
情報を鵜呑みにせず、一度立ち止まる。
家族や友人に相談し、複数の視点で確認する。
「正しさ」を共有することが、最も確実な防御になる。
詐欺の進化は、私たちの油断と共にある。
疑うことは恥ではない。
それは、誠実さを守るための知性である。
作品名:「騙されたでは済まない時代に」 作家名:タカーシャン