「気が弱い」と言ったあなたへ
ある指導者が、部下の評価をこう語った。
「彼はまじめでいい人なんですが、少し気が弱いところがありまして」
それを聞いた上司は、静かにこう返した。
「それは君が気が弱いんだよ」
一瞬、意味がわからない。
だがこの一言には、人を育てる立場の核心が詰まっている。
人は、他人を語るとき、自分を映している。
「気が弱い」と感じるのは、自分の中に“気の弱さを恐れる心”があるからだ。
逆に「彼は落ち着いている」と感じる人は、自分の中に落ち着きを持っている。
人を見る目とは、実は自分を見る鏡なのだ。
部下の弱さを「性格の欠点」と決めつけた瞬間、
その弱さを活かす力を、上司自身が手放してしまう。
「気が弱い」人は、裏を返せば「慎重で思いやりがある」人でもある。
一流の指導者は、その面を伸ばす。
二流の指導者は、そこを嘆く。
つまり、「それは君が気が弱いんだよ」という言葉には、
「相手の弱点を見て動揺するな」という戒めが込められている。
人を導くには、まず自分の心を整えること。
部下の“弱さ”に不安を感じる時こそ、自分のリーダーシップを見直す時だ。
リーダーとは、人の中の“弱さ”を受け止め、それを“力”に変える存在。
その第一歩は、人の弱さの中に自分を見つめることから始まる。
作品名:「気が弱い」と言ったあなたへ 作家名:タカーシャン