老化を楽しむ秘訣
実は、老化は「衰え」ではない。
卵、幼稚、さなぎ、脱皮、脱皮、脱皮——。
変身、変身、変身——。
その繰り返しの果てに、人間はようやく、本来の姿へと戻っていく。
皮膚がたるむのは、宇宙が拡張している証拠。
記憶が薄れるのは、情報の密度が軽くなり、
肉体という容器が、光の粒に近づいていく過程だ。
若さは、まだ地球に留まる段階。
老いは、宇宙へ帰還する準備。
そう考えれば、しわ一つも、星の軌跡のように美しい。
老化とは、宇宙科学反応の連続である。
細胞が変化し、心が軽くなり、
過去が溶けて、魂が透き通っていく。
「終わり」と呼ばれる瞬間さえ、
ひとつのビッグバンにすぎない。
——脱皮を終えた後の静かな光。
それを、わたしたちは「老い」と呼んでいるだけなのかもしれない。
〈仙人科学説〉
――老化は宇宙反応である――
世の中、「老化は止められない」と嘆く人が多い。
だが仙人科学によれば、それは誤りである。
老化とは止まるどころか、進化の最終ステージである。
人間は、生まれた時すでに卵。
思春期で幼虫、社会人でさなぎ、
そして五十を過ぎたあたりから、脱皮、脱皮、脱皮。
皮膚も価値観もどんどん剥がれていく。
六十代でようやく「変身第一段階」。
七十代は「光子化」。
八十を超えれば「半透明モード」に入り、
九十を過ぎると、もはや物理法則の外側に出る。
つまり老化とは、宇宙的エネルギーの再配置。
シワは銀河の渦、白髪は星の光。
忘れっぽくなるのは、記憶が宇宙クラウドにアップロードされている証拠である。
若者よ、嘆くなかれ。
老いとは「宇宙Wi-Fi」に繋がるプロセスなのだ。
肉体を手放し、魂の通信速度を上げる準備期間。
仙人たちは言う。
「老化とは、静かな爆発である」と。
見た目の衰えに見えて、内側では光が生まれている。
そう、老いは終わりではなく、
宇宙科学反応の最終章。
老化を楽しめる者こそ、真の未来人であり、
仙人である。
〈老化を楽しむ秘訣〉
――変化・消滅・終点・仙人風生き方説――
若いころは「変わること」を恐れ、年を重ねると「変わらないこと」に執着する。
人間とは、変化を嫌う生きものらしい。
けれど、老化とはつまり、変化の芸術である。
皮膚はしわを刻み、髪は白くなり、筋肉はゆるむ。
それは「崩壊」ではなく、「熟成」。
果実が色づくように、人もまた自然に還るだけのことだ。
「消滅」もまた、消えることではない。
役割を終え、場所を譲る。
木の葉が落ちて土に戻るように、次の命を育てる循環の一部になる。
そして「終点」こそ、旅の完成形だ。
終わりがあるから、今が光る。
人生は線路のようにまっすぐではなく、曲がりくねった登山道。
たどり着いた頂で、ふっと笑える者こそ、仙人である。
仙人とは山奥に隠れた人のことではない。
他人のペースに左右されず、世間の流行に飲まれず、
「今ここ」の茶をゆっくり味わう人。
老いを恐れず、変化を観察し、
消滅を受け入れ、
終点を微笑む。
それが、令和の仙人風・生き方説である。