黄表紙風コラム:人生は借り物だらけ
いやはや、私たちという生き物、何もかも自分のものだと思ったら大間違い。
本や道具、服に車、ちょいと借りて使うだけのクセに、しれっと自分のもの顔。
「返す」と言えば、返さずに済むことも多いのが人生の味噌である。
時間も借り物だ。
誰かの貴重な時間を奪っては、今日も私の都合で消費する。
未来だって同じだ。まだ来ぬ日々を勝手に計画しては、借りっぱなしの夢を膨らませる。
思いも借りる。
友情、信頼、ちょっとした優しさ。
もらったのに、「あ、これ私のもの」と思ってしまうのは、人間の悪いクセである。
価値も借り物。
文化や知恵、評価なんて、先人の汗や他人の努力の上に乗っかるだけ。
何も知らぬ顔して「私の成果」と胸を張るのは、少々厚かましい。
そして、心もまた借り物だ。
自然の風、街のざわめき、誰かの笑顔。
独りで生きているように見えて、実は周囲に支えられ借りまくっているのだ。
人生とは、借り物の連続劇。
返すも返さぬもご自由に、でも借りたものの数だけ、笑いと感謝が増える。
さあ今日も、あれこれ借りて、ちょっと得した気分で生きていこうではないか。
作品名:黄表紙風コラム:人生は借り物だらけ 作家名:タカーシャン