筆洗:パターンとは
同じようなことでつまずき、同じようなことで傷つく。
人は案外、「同じ道」を何度も歩いているらしい。
しかも、それに気づくのはいつも少し遅い。
心理学では、それを「パターン」と呼ぶ。
心の癖、反応の型、逃げ方の習慣。
言い換えれば、それは自分という器の“くり返し方”だ。
子どもの頃に覚えた守り方や、誰かに好かれるための態度。
それが大人になっても、無意識に顔を出す。
パターンは悪者ではない。
それがあったから、人はここまで生き延びてきた。
だが、古いパターンにしがみつくと、
新しい風が吹いても、心が動かない。
社会もまた、パターンの生き物だ。
景気がよくなれば調子に乗り、
悪くなれば誰かを責める。
戦争を悔やみながら、同じ構造を繰り返す。
歴史も、人間の大きな心のパターンの一部なのだろう。
だからこそ、私たちに必要なのは「気づき」だ。
気づけば、パターンは敵ではなく、先生になる。
気づかねば、同じ模様を何度でもなぞることになる。
繰り返しの中に、変わらぬ心。
変わらぬ心の中に、変われる希望。
そんな人間の図案こそ、いちばん複雑で、美しい“パターン”かもしれない。