令和のゲリラ ― 山から降りてきたもう一つの隣人
近年、「熊による被害」のニュースが全国で相次いでいる。
登山道だけでなく、住宅街、学校、農地にまで出没。
負傷者、さらには死亡者まで――。
その様相は、まるで“令和のゲリラ戦”である。
熊は本来、人を避ける臆病な生き物だ。
だが、山の環境が変わり、ドングリや山菜が減少し、
里に降りなければ生きられない熊が増えている。
人間が山を削り、宅地を広げ、森の生態バランスを崩した。
「熊が出るようになった」のではなく、
「熊が追い出された」と見るべきだろう。
とはいえ、現実には人命が失われている。
感情論だけでは済まされない。
ここで必要なのは、「共存」の理想と「安全」の現実を両立させる仕組みだ。
一つの提案として、熊探知システムの導入がある。
AIセンサーや赤外線カメラ、ドローンを活用し、
山の入口や集落の周囲に「熊の動きをリアルタイム表示」する。
スマホや防災無線に自動通知される仕組みを全国に整えることで、
“出会う前の回避”が可能になる。
さらに、山の面積に対する熊の頭数管理も欠かせない。
人と熊が適切な距離を保つには、一定の生息密度を維持する科学的なモニタリングが必要だ。
狩猟だけでなく、GPS首輪による追跡、繁殖数のデータ化など、
「見えない野生」を“見える化”する時代が来ている。
人間の都合で増やしすぎ、減らしすぎ、
自然を操作してきたツケが、今、山から降りてきている。
令和の熊騒動は、単なる動物ニュースではない。
それは“自然との関係の再設計”を迫る、時代からの警鐘なのである。
作品名:令和のゲリラ ― 山から降りてきたもう一つの隣人 作家名:タカーシャン