影響という名の見えない手
どのような作品でも、自作はない。
この言葉を口にすると、少し驚かれることがある。
「いや、自分の力で書いた」「誰の真似でもない」と言いたくなる人も多いだろう。
だが、よく考えてみれば、私たちはいつも何かに影響されながら生きている。
使う言葉、感じるリズム、選ぶ色彩、心が動く瞬間。
そのどれもが、誰かの存在に触れて芽生えたものだ。
子どもの頃に聴いた音楽、親の背中、通りすがりの人の一言、
好きだった人の笑い方さえ、作品のどこかにひっそりと息づいている。
創作とは、誰かから受け取った光を、
自分の心を通してもう一度世界に返す営みだと思う。
完全なオリジナルなど存在しない。
あるのは「どう受け取り、どう返すか」という誠実な態度だけだ。
だからこそ、作品をつくるたびに思う。
「ありがとう」と。
私を育て、支えてくれた見えない手たちに。
それは教師でも、友でも、亡き人でもいい。
作品とは、そうした無数の“他者”と“時間”の共作なのだ。
そして、そんなつながりの中で生まれたものだけが、
誰かの心に届くのだと思う。
作品名:影響という名の見えない手 作家名:タカーシャン



