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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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黄表紙風『太陽月光道中記』

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黄表紙風『太陽月光道中記』

むかしむかし、世の中には、
昼と夜が仲たがいしておったそうな。

太陽どのは言う。
「おれの光こそ天下一。月の奴など、借り物の光じゃねぇ」

すると月どの、涼しげな顔で答える。
「あなた様のようにギラギラしては、恋もできませぬ」

そこへ通りかかったのが、人間どの。
「まぁまぁ、二人とも落ちついてくだされ」

この人間どの、どうも不思議なやつで、
昼には太陽に似て働き、
夜には月に似て考える。
「汗とため息の両刀使い」と呼ばれておった。



ある日、太陽どのが聞いた。
「人間や、そんなに頑張って燃えすぎると、干からびるぞ」

「いえいえ」と人間どの、
「夜になれば、月どのがわたしを冷やしてくれますゆえ」

月どのは微笑んで言う。
「昼のあなたの熱があるから、夜の私の光が映えるのです」

なるほど、世の理はバランスにあり。
燃えてばかりでも、凍ってばかりでも、
人の道はうまくいかぬもの。



そのうち、人間どの、町の人に説法を始めた。
「元気な友には月光のごとく静かに、
 元気のない友には太陽のごとく温かく。
 ときにそよ風、ときに暖流。
 これぞ“人付き合いの秘伝書”でござる」

町人たち、「なるほど」と手を打った。
「こりゃあ、商いにも夫婦げんかにも効く薬じゃ!」

かくして太陽どのと月どの、
手を取りあって空にのぼり、
今日も人の世を照らしておる。

人間どのも、笑いながらつぶやいた。
「人の一生とは、
 太陽の情熱と、月の静けさの、
 道中記にござるなぁ」



おあとがよろしいようで