小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

秋の虫と人間の恋

INDEX|1ページ/1ページ|

 
秋の虫と人間の恋

リーンリーンと鳴くスズムシは、ひたむきな恋の人に似ている。
一途に、ただひとりに向かって声を響かせ続ける。
返事があるかどうかもわからないけれど、信じて鳴き続けるその姿は、片想いの切なさを思わせる。

チンチロリンと軽やかなマツムシは、恋を楽しむ人のようだ。
駆け引きも深刻さもなく、会話のようにリズムを重ねる。
「好き」という気持ちをユーモアに変え、相手を笑わせてしまう。
恋を重苦しくしない軽快さは、マツムシの恋愛観なのだろう。

コロコロと鳴くコオロギは、穏やかな夫婦を思わせる。
派手さはなくても、日常のなかで小さな安らぎを重ねていく。
隣にいることがあたりまえで、その「当たり前」が実はかけがえのない幸せ。
コオロギの声は、暮らしに寄り添う愛を奏でている。

スイーッチョンと鳴くウマオイは、遠距離恋愛の人のようだ。
少し間のびして、届くまでに時間がかかる。
けれども届いたときには、ゆっくりとした深い響きが心に残る。
急がず、待つことを愛の証にしている恋もある。

ガチャガチャと鳴くクツワムシは、情熱的な恋の人に似ている。
思いを抑えきれず、大きな声でぶつける。
ときにうるさく思われても、それは相手に本気だから。
燃えあがるように鳴く声は、まるで駆け引きよりも直球勝負を選ぶ恋人のようだ。

――秋の虫たちの声は、恋の形そのものだ。
静かな片想いもあれば、笑いに包まれた関係もある。
長く連れ添う安らぎの愛もあれば、距離を超える恋もあり、激情に燃える恋もある。

夜空に響く虫の声を聴きながら、人の恋の多様さを重ねると、自然と心がやわらかくなる。
恋は虫も人も、命を輝かせる一番の調べなのだろう。



秋の虫たちの恋の裏側

リーンリーンと鳴いても返事がないスズムシ。
彼は、まるで失恋した青年のようだ。
声を枯らしても届かず、夜空に虚しく響いていく。
それでもやめられないのが恋の不思議。
スズムシの失恋は、人間の「想いすぎて眠れない夜」と重なって見える。

一方で、チンチロリンと鳴くマツムシはちょっと違う。
ひとりに返事がなくても、すぐに別の相手に声をかけてしまう。
まるで「失恋を癒すのは新しい恋」と言わんばかり。
浮気性な人の軽やかさを映すのが、この虫の鳴き声だ。
その楽しげな調子は、恋に自由を求める人間の心そのもの。

ガチャガチャと豪快に鳴くクツワムシはどうだろう。
強く主張しすぎて、かえって相手が逃げてしまう。
「熱すぎる愛」が裏目に出るのは人間も虫も同じらしい。
しかし懲りずにまた声を張り上げる姿は、まるで恋に不器用な人のようで、どこか愛おしい。

コロコロと鳴くコオロギは、一途な性格。
でも、ときどきふらっと違う方向へ転がっていく。
浮気というより「気まぐれ」。
人間でいえば、飲み会の帰りにちょっと心が揺れる瞬間に似ている。

――虫たちの恋は、必ずしも美しいだけではない。
失恋もあれば、浮気もある。
熱すぎて失敗する恋もあれば、軽やかに次へ飛び移る恋もある。
その姿を聴き取ると、人間の恋の哀しさと可笑しさがそのまま重なって見えてくる。

秋の夜の虫の声は、まるで「恋の縮図」。
だから聴く人の胸を、どこか切なく、どこかおかしく震わせるのだ。



禁じられた恋をしている虫

秋の夜、草むらの奥でひそやかに鳴く虫がいる。
それは大声で鳴き交わす仲間たちとは違って、どこかためらいがちな響きだ。
まるで、人に知られてはいけない恋を抱えているかのように。

同じ種類同士で鳴き合うのが自然の掟。
けれどもその虫は、違う声に惹かれてしまった。
リーンリーンの響きに、チンチロリンが応えてしまう。
本来なら交わるはずのない旋律が、夜風に交錯する。

人間の世界にも、そんな恋はある。
立場が違う、年齢が離れている、あるいはすでに誰かの伴侶がいる。
理屈では「いけない」と知りながらも、心だけは止められない。
だからこそ、その恋は苦しく、そして一層切なく燃える。

禁じられた恋をしている虫の声は、他の虫よりも小さい。
けれども耳を澄ませば、その小さな声にこそ「真実の叫び」が宿っている。
人間の禁じられた恋と同じように、短い命を燃やし、せめてひとときでも寄り添おうとする。

――秋の虫たちの世界にも、人間の世界にも、掟を越えてしまう恋がある。
それは許されないかもしれない。けれど、その恋があったからこそ、命は声を張り上げ、夜を震わせるのだ。

作品名:秋の虫と人間の恋 作家名:タカーシャン