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タカーシャン
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novelistID. 70952
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待つということを、自然に学ぶ

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待つということを、自然に学ぶ

人はいつも何かを待っている。
電車、結果、返事、季節。
「まだかな」と心の中でつぶやくその瞬間、
私たちは未来に向かって意識を飛ばしている。

では、自然界に“待つ”はあるのだろうか。



春を迎える植物は、
光や温度が一定の条件を満たしたときだけ芽を出す。
セミの幼虫は十年以上も地中に身を潜め、
静かに羽化の時を迎える。
外から眺めれば、これはまるで“待っている”ように見える。

けれど彼らは「まだかな」と思ってはいない。
眠る種子も、土の下の幼虫も、
ただ条件が整うまで存在し続けているだけ。
そこには未来への焦燥も期待もない。



人間だけが、「待つ」という言葉を持った。
未来を想像し、
やがて来る出来事に心を揺らすからだ。
希望と不安が入り混じる時間。
それは、静止ではなく物語だ。

自然はただ、今を生きている。
芽吹きは、ただ起こる。
夜明けは、ただ訪れる。
私たちが「春を待つ」と名づけるのは、
その出来事に意味を与えたいからにほかならない。



待つことは人間の特権かもしれない。
だからこそ、私たちは
待つ時間に焦らず、
自然のように“ただ在る”ことを学べばいい。

条件が整えば、芽は出る。
時が熟せば、必ず朝は来る。
待つことは、信じること――
自然はそれを、黙って教えてくれている。