自分という羅針盤を持つ
私たちは、誰かの視線や言葉に思った以上に支配されている。
「あの人にどう思われるだろう」「こう言わなければ」と気を張り続ければ、心は細くすり減っていく。けれど、よく考えてみれば、他人の物差しで自分を測る必要など本当はない。
自分らしく生きるとは、外の評価を振り切ることではない。
むしろ自分の感覚を信じて育てていくことだと思う。
朝、服を選ぶときに「似合うと言われそうか」ではなく「今日の私に心地いいか」で選ぶ。
誰かの成功を見ても、比べずに「へえ、そういうやり方もある」と一歩引いて眺める。
寝る前には、今日うれしかったこと、いやだったことを数行でいいから書いてみる。
そんな小さな習慣が、自分の内側にある“羅針盤”を少しずつ鮮明にしてくれる。
そして、もう一つ大切なのは「断る勇気」だ。
気の進まない誘いに「今日は都合がつかないのでまた今度」と言えたとき、自分の時間と心を守る力が確かに強くなっている。
好きな音楽を聴く、気ままに散歩する、ただコーヒーを味わう――
誰にも左右されない“自分だけの楽しみ”は、日々の疲れを癒やすだけでなく、自分らしさの基礎体力を育ててくれる。
他人の目は消せない。
でも、自分をどう感じるかは、自分の領域だ。
その領域を丹念に手入れしていくと、他人の言葉はいつしかただの“外の天気”になる。
今日も空は移ろう。
けれど私の内側には、変わらない晴れ間が静かに広がっている。
作品名:自分という羅針盤を持つ 作家名:タカーシャン