ハイブリッド40%で生きるという選択
いつでもどこでも全力を出し切る──そんな理想を胸に抱いたまま、私たちは日々を駆け抜けてきた。
けれども現実は、体も心も機械ではない。仕事でも家庭でも、100%の能力を発揮し続けることなど、そもそもできない。それがあたりまえだ。
だから私は「ハイブリッド40%」という考え方に惹かれる。
それは、燃料を切り替えながら走るハイブリッド車のように、状況に応じて出力を調整しながら生きること。心身の余白を保ち、余力を未来へ残す生き方だ。
40%とは、安全運転の速度だ。
力を抜くというより、必要以上に踏み込まない。余白があるからこそ、急な坂道やカーブに出会った時でも慌てずに対応できる。突発的なチャンスや思いがけない誘いにも、しなやかに反応できる。
実際に取り入れるのは難しくない。
朝、今日やることを三つだけ決め、それ以外は「できたらラッキー」と決めておく。
集中が切れたら深呼吸を三回して、心の出力を40%に戻す。
一時間ごとにほんの数分立ち上がり、背伸びをする。
結果を「何%の力を出せたか」で評価するのではなく、「40%のまま続けられたか」で振り返る。
この小さな習慣は、思いのほか大きな効果をもたらす。
燃え尽きを防ぎ、観察力や創造力を取り戻し、人への関わりもやわらかくなる。
そして、必要な瞬間にだけ自然と100%の力が立ち上がってくる。
いつでも全力を求めない。
そのかわり、持続可能な自分を育てる。
ハイブリッド40%は、現代を生き抜くための静かな知恵であり、私たちに与えられた“ゆとりある強さ”なのだ。
作品名:ハイブリッド40%で生きるという選択 作家名:タカーシャン