つんのめるということ
目だけが未来を見つめ、心だけが駆けだし、
まだ足は一歩を踏みしめていない。
そんな時、わたしはつんのめる。
計画よりも気持ちが先へ、
気持ちよりも体が遅れて。
バラバラのように感じるその瞬間、
まるで音の合わない楽器たちが
同じ曲を探しているかのようだ。
けれど、これは故障ではない。
心と体はそもそも速度が違う。
心は一瞬で未来へ跳び、
体は血の温度を確かめながら
ゆっくり現実を歩む。
その差が、つんのめりとして表れるだけだ。
つんのめるたびに、
わたしは呼吸を深くする。
足裏の重さを感じる。
視界を横に広げる。
すると、心と体のあいだに
ふわりと余白が生まれる。
その余白は、
前へ進みたい情熱をただ押さえつけるものではなく、
前へ進むために必要な“リズム”を
整える小さな休符だ。
つんのめることは止められない。
けれど、つんのめりながらも
自分のテンポを取り戻すことはできる。
未来へ視線を投げながら、
今という地面に足を置く。
心と体が完全に一つになる日は
来ないのかもしれない。
だからこそ、
わたしは今日も少しつんのめりながら、
自分だけの歩調を探しつづける。
作品名:つんのめるということ 作家名:タカーシャン