おいしさの哲学「真実のおいしさ」とは
極上の和牛や宝石のようなスイーツ、芳醇なフルーツ。
舌を驚かせ、感嘆の声を引き出すその瞬間は、まるで舞台の一幕のように華やかです。
しかし、それは“娯楽”に近いおいしさ。
私たちが毎日求めているものとは、少し種類が違うかもしれません。
一方で、炊きたての白いご飯。
湯気を立てる豆腐の味噌汁。
淡い塩気と大豆の甘みが静かに口の中に広がるとき、
心も体もほっと息をつく。
そこには派手さも驚きもありません。
ただ“必要”であり“いつでも受け入れられる”滋味がある。
真実のおいしさとは何か。
それは、舌だけではなく、心と身体が同時に「これでいい」と頷くものではないでしょうか。
季節や体調、その日の心の揺れに合わせて、必要な栄養と安らぎを運んでくれる。
高価でも特別でもないのに、日々を支え、未来へつなげる力を秘めている。
食べ物の価値を、価格や珍しさだけで測る時代は終わりつつあります。
五感が覚える“安心”や“整う感覚”こそが、
「真実のおいしさ」の証。
今日も湯気の向こうで待っている白いご飯や味噌汁のように、
ささやかで、しかし揺るぎない味。
それは、私たちが生きていくための哲学そのものなのです。
作品名:おいしさの哲学「真実のおいしさ」とは 作家名:タカーシャン