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タカーシャン
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novelistID. 70952
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値上げできないもの

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値上げできないもの

 スーパーに並ぶ値札が、毎週のように塗り替えられていく。
 電気、ガス、交通費。
 家計簿の数字はじわじわと膨らみ、
 日々の暮らしは小さなため息で埋め尽くされる。

 しかし――
 米やパン、味噌汁の湯気。
 季節ごとに食卓を飾る地元野菜。
 これらはたとえ世界がどんなに騒いでも、
 “値上げしてはいけない”と私は思う。

 理由は単純だ。
 それらは単なる主食ではなく、
 心を支える食材だからだ。

 炊きたてのごはんをほおばるとき、
 祖父母の笑顔や、子どものころの夕暮れがよみがえる。
 食卓を囲む時間は、
 貨幣の相場に換えられない記憶と結びついている。
 値段が上がれば、
 その記憶ごと遠ざかるようで怖いのだ。

 もちろん現実には、生産にもコストがかかる。
 農家や漁師、パン職人の努力があってこそ
 私たちは日々の一膳を口にできる。
 だからこそ社会全体で守りたい。
 主食や庶民の食べ物を、
 心の値段で手渡し続ける仕組みを。

 値上げが止まらない時代にこそ問われる。
 私たちは何に値札を貼り、
 何を永遠の“心の食材”として残すのか。
 その選択こそが、
 これからの豊かさの指針になるのだと思う。