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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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言葉の海を泳ぐ

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言葉の海を泳ぐ

 言葉は、思った以上に生きものだ。
 口を開いた瞬間、私の意図を離れ、
 小さな舟のように相手の心へと漕ぎ出していく。
 その航路を完全に操れる人などいない。

 「今の発言、あれでよかったのか」
 会話が終わったあと、胸の奥に波紋が残る。
 自分だけが何度も再生する映像。
 相手はきっと、もう別の景色を見ているのに。

 同じ話を繰り返しているのではないか、
 聞き手を退屈させているのではないか――
 そんな不安が、言葉の自由を縛る。
 けれど考えてみれば、
 音楽も詩も、リフレインがあるから心に届く。
 繰り返しは、安心と記憶をつくる大切な要素だ。

 時には、でまかせが口をついて出る。
 会話を途切れさせたくなくて、
 相手を喜ばせたくて、
 心より先に舌が動く。
 その後で「収拾がつかない」と胸がざわめく。
 けれど、それもまた人とつながろうとする力の証だ。
 沈黙を恐れず、ひと呼吸おいて言葉を選ぶ――
 その小さな練習が、海をおだやかにする。

 不安は、誠実さの裏返し。
 言葉を大切にしたいからこそ、
 心は揺れ、波を立てる。

 今日も私は、言葉という海を泳ぎ続ける。
 完全な操縦などいらない。
 大切なのは、今この瞬間、
 相手へ向けるまなざしと、
 波の音を聴く耳。
作品名:言葉の海を泳ぐ 作家名:タカーシャン