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タカーシャン
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novelistID. 70952
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アポなし訪問と、令和の空気

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アポなし訪問と、令和の空気

昔は、突然の来客に「おお、よく来たな」と玄関先で迎え入れる光景が当たり前にあった。
親戚がふらりと顔を出し、隣人が野菜を手に訪ねてくる。
それは昭和の温もりであり、人との距離が近かった時代の呼吸だった。

けれど令和。
スマホ一つで予定を共有し、メール一本で確認することが“思いやり”の証となった。
仕事の場面ならなおさら、突然の訪問は相手の時間を奪う行為と受け取られる。
「事前に連絡する」――そんな小さな配慮が、相手を尊重する時代の常識だ。

アポなし訪問は、今や“昭和の亡霊”のように扱われる。
「昔はこれで普通だったのに」という声が聞こえるたび、
私たちが失ったものと得たものが、静かに天秤にかけられる。

確かに、突然の再会に胸が躍る瞬間はある。
しかし、それを心地よく受け取るには、
お互いの暮らしや仕事が、かつてより複雑になりすぎた。
忙しさと個の尊重。
そのどちらも軽んじられない時代に、
配慮こそが新しい“当たり前”として求められている。

昭和の感覚は懐かしく、温かい。
だが令和を生きる私たちは、
「会いたい」気持ちをひとこと伝えてから訪ねる。
その一手間こそが、今の優しさだと思う。