新世界
その4
子育てが下手な私は二人の娘にとっては辛い子供時代だったと思う。
経済的にはゆとりがあり、両親と祖母やその姉などの人的環境にも恵まれ、本来ならすくすくと成長できるはずなのにどういうことだったのだろう。
思い巡らしてみるに、私たち親(夫)のノイローゼ状態、私自身も夫や子供を温かく包みむほど大人ではなかったということだ。
やっと健康を取り戻して大学に行き、母の保護のもとで卒業できた。私は何もかもやってもらうほどの子供の精神年齢だった。
娘たちは大人に成りきっていない者同士の結婚で生まれた子供だったのだ。
器量良く生まれたのは夫の遺伝子を受け継ぎ、頭もそこそこ良かったのは総合作用だと思う。
男の直系がいない我が家では母は医師とはいえ、誰かに寄りかかりたいという思いのなかで私を育てた。
繰り返す未成熟な大人(アダルトチルドレン)の子育ての連鎖。
今はそれらの人も亡くなって私が家の跡を継いでいる。
私は年老いたが、娘二人が強く生きていく能力を備えているので何も心配は要らない。
不自由なことは何もない。
大人になった娘たちは私には優しい子になった。
私が心身共に弱い母親だっただけに、私自身が味わったと同じように反面教師の親を見て、何もかも自分がやらなきゃという気持ちで大人への道を駆け上がったのだろう。
しっかり者の厳格な親の元で自立ができない子もいるが、それとは真逆の事例だ。
何も干渉せず、黙々と支援だけをし続けた私のやり方は決していいとは思っていないが、結果的に良い方向へと向かっている。
今後は娘たちは自分の人生を自己責任でそれなりに歩んで欲しい。
完



