新世界
思いがけない未来 その1
小さな町でひっそり暮らした十年だった。
病気療養中の夫が亡くなってもう十年余りが過ぎて、私は広い自宅の敷地の中に独り取り残されて暮らしていた。
母は夫が逝く数年前に亡くなってをり、夫の変貌した人間性に付き合うのはかなりの恐怖と辛抱が必要だった。
夫の死後ひとりになってから俳句の会に入ったり、写真を撮ってブログを書いたりして大して孤独でもなく安気な生活をしていた。ただこの先の健康寿命が二十年も三十年もあるわけではないので、このままの生活を平穏に暮らしていくのかなあというぐらいの気持ちでいた。