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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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耐え抜いた30年

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耐え抜いた30年

朝の電車はいつも混んでいた。
押し合う人々の中で、窓に映る自分の顔を見つめる。
少し疲れた顔、眠そうな目、そして、今日もまた耐えなければならない現実。

30年前、新卒で入った会社。
夢や希望に胸を膨らませ、毎日を頑張る自分がいた。
しかし、バブルが崩れ、景気は低迷し、社会は変わらず動き続けた。
期待した昇進も、報酬も、思うほどは増えなかった。
やりたいことができる自由も、思ったようには得られなかった。

それでも辞めなかった。
逃げなかった。
家庭も仕事も、介護も、責任も、すべて抱えながら、
ただ毎日をやり過ごした。

誰かに褒められることは少なかった。
しかし、確かに得たものもあった。
困難に耐える力。
人を理解し、思いやる心。
目立たなくても、地味でも、毎日をやり抜く忍耐力。

ある日、ふと思った。
「この30年は、何だったのだろう?」
損をした時間、無駄な時間――そう思うこともあった。
でも、静かに振り返ると見える。
自分が歩いた道のすべてが、未来のための礎になっていることが。

部下と話した夜、家族の笑顔を見た瞬間、
一人で夜遅くまで数字と格闘した時間、
誰にも知られず乗り越えた困難。
それらすべてが、今の自分を支えている。

耐え抜いた30年は、確かに孤独だった。
けれど、同時に、自分を鍛え、未来を形作る時間でもあった。
数値や評価では計れない、心と経験という財産を積み上げた30年。

そして今、ようやく思える。
「耐え抜いた自分を誇っていい」と。
無駄だった時間などない。
すべては、これからの人生を生き抜くための力となったのだと。

朝日が差し込む窓の前で、深呼吸をする。
過去の自分を抱きしめ、未来へ歩き出す。
耐え抜いた30年がくれた力を胸に、
今日も、確かに一歩を踏み出すのだ。
作品名:耐え抜いた30年 作家名:タカーシャン