好き→嫌いへ切り替わる 人の心の流れをたどる
私たちの心は、出会いの瞬間に一枚のフィルターをかける。
まず目に映るのは「顔」。そこから無数の情報を受け取る。優しそうか、誠実そうか、どこか危ういか──。その直感が最初の入口になる。
次に耳に届く「声」。柔らかい調子に安心することもあれば、硬い響きに距離を感じることもある。
さらに「しぐさ」。動きのリズムや間合いが、心の奥に隠れた真実を語り出す。
こうして、顔・声・しぐさが合わさって、私たちは「この人が好きだ」と感じる。だが、心の回路はそこで終わらない。
ある時、言葉と態度が食い違うことがある。
優しそうな顔の裏に、冷たい響きの声を聞いたとき。
柔らかな声なのに、ぞんざいなしぐさを目にしたとき。
私たちの中に「不協和」が生まれる。
その違和感は小さなノイズのように積み重なり、やがて信頼を揺らす。
「思っていた人と違う」──そう気づいた瞬間、好意は音を立てて崩れ、好きは嫌いへと反転する。
好きも嫌いも固定された感情ではなく、流れるように変化する判断の結果だ。
私たちの心は、顔・声・しぐさという総合システムを用いて、常に「安心できる相手かどうか」を確かめ続けている。
だからこそ、出会いは儚く、関係は移ろいやすい。
けれど、その揺らぎの中にこそ、人と人とが分かち合う本当のドラマが隠れているのだろう。
作品名:好き→嫌いへ切り替わる 人の心の流れをたどる 作家名:タカーシャン