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タカーシャン
タカーシャン
novelistID. 70952
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「宜しくお願い致します。」は国民的呪文

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「宜しくお願い致します。」は国民的呪文

日本人のメールを100通集めると、最後に必ず出てくる言葉がある。
「宜しくお願い致します。」

これはもうビジネス社会の合言葉、いや、もはや呪文である。
新人もベテランも、とりあえず最後に唱えておけば無難。
もし忘れたら? 相手に「なんかこの人、冷たくない?」と疑われるリスク大。
まるでドラクエで「ホイミ」を唱え忘れるようなものだ。

ところが最近、この呪文にケチをつける人々が現れた。
曰く、「正しくは“よろしくお願いいたします”です」
曰く、「“宜しく”は当て字です」
曰く、「“致します”は補助動詞化したから漢字にするな」

……いやいや、そんなこと言ったら、もう毎日のメール送信ボタンを押すたびに国語の試験を受ける羽目になるじゃないか。
しかも指摘する人の多くは、ちょっと得意げな顔をしている。
「ふふん、間違えてるよ」と。
言葉のマナー警察、恐るべし。

だが考えてみてほしい。
「宜しくお願い致します。」と書かれて不快になる人が、果たして何人いるのだろう。
むしろ「なんか漢字多めでキリッとしてるな」くらいにしか思わないはずだ。
いや、下手をすれば「ひらがなばっかりより読みやすい」と思う人だっている。

結局のところ、この表現は「誤用」かもしれないし「慣用」かもしれない。
でも実際は、もう国民みんなで唱えすぎて「正しいかどうか」なんて超越してしまった。
もはや国民的な呪文なのだ。

今日も私はメールを打つ。
「お世話になっております」
「取り急ぎご連絡まで」
そして最後に――
「宜しくお願い致します。」

送信完了。
ああ、今日もまた一日、呪文のおかげで世界は平和である。