豊かさとは『価値を下げること』
昔は「手に入らないからこそ価値があった」。
例えば写真一枚。フィルムを買って、現像して、ようやく見られる。だから一枚一枚に命を込めた。
でも今はスマホで数秒。保存しすぎて二度と見返さない。
音楽だってそう。
レコードを磨き、針を落とし、じっと耳を澄ませた。
今は「聴き放題」。膨大な曲に囲まれて、逆に耳が空っぽになる。
つまり「豊かさ」とは、便利さや簡単さを手に入れる代わりに、ひとつひとつの物事の価値を薄めることかもしれない。
手間が減るほど、ありがたみも減る。
スマホ一台で世界が掌に収まるけれど、同時に世界が「軽く」なってしまった。
だからこそ、これからの豊かさは
「わざわざやること」
「手間をかけること」
「不便を味わうこと」
そこにしか残らないのかもしれない。
作品名:豊かさとは『価値を下げること』 作家名:タカーシャン