価値価値山のふもとで
この世界には、見えない山がある。
名前は「価値価値山」。
物も人も、この山を登ると価値が上がっていく。
物の場合、たとえば普通のリンゴ。
そのままでもおいしいけれど、
きれいなカゴに入れられたり、
銀色の皿に乗せられたり、
リボンを結ばれたりすると、
「あら、特別」になってしまう。
これが“入れ物効果”という登山ルート。
人の場合はもっと複雑だ。
化粧やファッションで見た目の標高が上がる。
知識や経験で、頭の高さがぐんと伸びる。
そして人格——これは山頂の空気みたいに澄んでいる。
手に入れるのは大変だけど、手に入れば一生もの。
でも、価値価値山の不思議なところは、
「何をプラスするか」は自分で選べることだ。
ある人はスキルを背負って登るし、
ある人は笑顔をかばんに詰めて登る。
中には“無駄話”という
やわらかいクッションを持って登る人もいる。
さて、あなたは何をプラスして登るだろう?
私は今日、ちょっとの勇気と、
あったかい言葉をリュックに入れて、
価値価値山のふもとを歩き出す。
作品名:価値価値山のふもとで 作家名:タカーシャ