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タカーシャ
タカーシャ
novelistID. 70952
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なぜ、私は急ぐのか

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『なぜ、私は急ぐのか』

駅までの道を歩いているとき、ふと気づいた。
今日は時間に余裕があるのに、私はなぜか小走りになっている。
まだ電車の発車時刻まで15分もある。ゆっくり歩いても、十分に間に合う。
それでも足はせわしなく前へ前へと急かされるように進んでいく。

そんな自分に問いかける。
「なぜ、私は急いでいるのか?」

思えば、子どもの頃から「時間に遅れてはいけない」と教え込まれてきた。
遅れること=失礼、評価が下がる、信用を失う。
そんな無言のルールが、私の中に根を張っている。

でも、これはただの「間に合わせたい」気持ちだけではない気がする。
どこか、心の奥に不安があるのだ。
“このままでは何か悪いことが起こる”という、根拠のない予感。
「今のうちにやっておかないと」「もっと前倒しにしないと」
そんな思考が頭の中を駆け回る。

もしかしたら私は、「のんびりしている自分」を許していないのかもしれない。
立ち止まること、何もしないことを、“怠け”と決めつけていたのかもしれない。
何かしていないと、不安になる。何かしているからこそ、自分には価値がある。
そう思い込んでいたのだ。

でも、それは本当だろうか。
本当に私の価値は「どれだけ急いだか」で決まるのだろうか。
今日、時間に余裕があるというこの事実こそ、私に与えられた自由なのに。

深呼吸をひとつ。
足をゆっくり運んでみる。
すると、景色が変わった。
街路樹の緑が鮮やかで、空の青がやけに優しく見える。
今まで見落としてきたものたちが、そこにちゃんとあった。

急がなくても、何も失わない。
むしろ、急いでいたからこそ、失っていたものがあった。

時間に余裕があるときこそ、
「いま、ここにいる自分」を感じてみよう。
心のペースを取り戻すこと。
それが、私の人生に必要な“余裕”なのかもしれない。
作品名:なぜ、私は急ぐのか 作家名:タカーシャ