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タカーシャ
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novelistID. 70952
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あっはーん文化考 ― 色気と茶化しの日本スタイル

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「あっはーん文化考 ― 色気と茶化しの日本スタイル」

「あっはーん」「うっふーん」「おっほーん」。
この三つの言葉を耳にすると、どこか懐かしい笑いがこみ上げてくる。色っぽいのに笑ってしまう、笑ってるのにちょっとドキドキする。これは、私たち日本人にとっての「色気」の原風景なのかもしれない。

昭和のバラエティ番組では、女優が「あっはーん」とうめくふりをして、観客がどっと笑った。志村けんのコント、ドリフのエロ親父、スナックのママ、週刊誌の見出し。そこに共通するのは、「本気で色っぽくなることへの、どこか恥ずかしさ」だった。

たとえば欧米のセクシーさは、真顔でビシッと決めてくる。「魅せてやるぞ」という気合が違う。けれど日本ではどうだろう。本気の色気は、どこか気恥ずかしい。だから笑いにする。笑いに包んでなら、なんとか出せる。――それが「うっふーん」文化なのだ。

「うっふーん」とは、あえてのセクシー。「おっほーん」は、もはや崩し芸だ。オネエの芸人が、男なのに女の声色で「うっふーん♡」とやれば、それはもう定番のギャグだ。色気をギャグにするのは、日本独自の高度な文化的翻訳作業だったのではないかと思う。

子どもの頃、テレビの向こうで「うっふーん♪」と聞こえるたびに、私は母の顔をこっそり伺った。笑っていいのか、気まずいのか。そんな曖昧さごと、昭和の家庭は「お茶の間」に取り込んでいった。

今ではこの三つの言葉を、TikTokのネタ動画で耳にする。令和の若者たちは、「うっふーん」を知らないまま使っているのかもしれない。でも不思議と、それでも通じているのだ。たぶん、日本人の中には、ずっと「色気を照れでくるむDNA」があるのだろう。

色っぽいけど、ちょっと笑える。
本気じゃないけど、なんか心に残る。
それが「あっはーん文化」なのだ。